若者は日本の歴史をどう見ている?~日本軍「慰安婦」をめぐって~
日本維新の会「歴史問題検証プロジェクトチーム」の河野談話見直しを求める署名が14万2284筆も集まったというニュースを目にしました。幼い子どもがいる若いお母さんたちが「子どものために」と署名してくれた、「裏づけもないまま韓国にへつらって作られた河野談話によって将来を担う子どもたちが辱めを受け続ける自体は避けたいという親の切実な願い」だと言います。(産経ニュース)これを何も感じずに普通に聞き入れてしまう人が多いのが日本の現状なのでしょうか。日本軍「慰安婦」の強制連行を「誤った歴史認識」というのが主流にされてしまうこの空気を受け入れている国民の無意識さに恐怖すら感じます。しかし私自身も、日本軍「慰安婦」の事を知り始めたのは平和運動に関わり始めたここ数年のことです。機会がなければ、今の状況に何も感じなかったかもしれません。テレビ、インターネットを中心とした情報では、慰安婦は強制的に連れてこられた事実はない、実は高額な収入を得ていた、戦争地域にはどこにでもあった、証言の裏付けがない、証言が矛盾している等など‥、都合のいい解釈で日本軍「慰安婦」の強制連行の事実を否定するものが多くあります。しかし、そのような情報の根本に女性の権利や人間の尊厳を考えることがすっぽりと抜けているのだと思うのです。昨年の橋下発言にもあったように慰安婦制度が必要だという前提に立った中での議論であり、戦前の日本をそのまま継承していることは恐ろしいことです。オランダ人に女性に対する強制連行を示す資料があったということは認められていることや、2004年中国人「慰安婦」一次訴訟の東京高裁判決にいても慰安婦強制連行の事実が認定されていることなどもほとんど語られません。自己表現の場を失った若者たちにとって重要なのは、溢れる情報の中で事実がどこにあるかではなく、ネット上で過激で差別的な発言で支持を得られることであり、それを快楽と感じている人もいるでしょう。2月の都知事選挙でも田母神氏を最も支持した年代が20代だったということで若者が右傾化している、と懸念されています。しかし実際は政治に関心を持たない人や歴史を知らない人がなにより多いのです。それがまた現政権の支えにされてしまっています。だから今こそ、若者と共に学び、人権について考え、今を問いなおしいくことをしたい。それを若者の表現の場としていくことで、暴走する今の流れを跳ね返していきたいのです。
(手をつなぐ女性の会「ふぃふてぃ」vol78に掲載原稿)