「主要農作物種子法廃止に際し日本の種子保全の施策を求める意見書」を提案

第4回定例会、12月15日の本会議最終日、意見書を提案しましたが、自民党会派、公明党会派の反対で否決されてしまいました。

以下、提案説明の内容です。

議員提出議案第7号「主要農作物種子法廃止に際し日本の種子保全の施策を求める意見書」について提案説明いたします。
「主要農作物種子法」は1952年に制定されました。種子法は私たちの主食である稲、大麦、はだか麦、小麦、大豆の伝統的な日本の在来種を国が管理し、各自治体に原種とその親である原原種の生産、維持、優良品種の開発、奨励、審査を義務付けてきたものです。種子は各地の農業試験場で雑種の混入、不良な種を取り除き、苗場農家を選抜して増殖させ、厳格に監査した優良品種を公共品種として安く、安定した供給をしてきました。また、その地域にあった多様な品種の開発、普及を義務付けてきました。これは日本の食料安全保障、食糧自給や食の安全のための当然の規制であったと言えます。
こうして日本のお米の種は100%自給でき、私たちの安心、安全な食生活が守られてきたのです。
ところが今年、4月14日、種子法の廃止法案が参議院で可決・成立し、2018年4月より種子法は廃止となることが決定しました。これまで維持してきた主要農作物の安定的な生産供給の法的根拠と財源が失われ、都道府県には原種、原原種確保の義務がなくなります。自治体の個々の判断に委ねられることになりますが、そのための具体的施策は示されていません。
参議院では、議決にあたり附帯決議が付けられました。種子の生産基準を作り運用すること、都道府県での種子の生産及び普及の取り組みのための財源の確保、種子の海外流出防止、種子独占の弊害の防止などが求められています。
しかし、それを全く無視するかのように、先月11月15日農林水産省事務次官通知がでました。① 主要農作物種子制度運用基本要綱② 主要農作物種子制度の運用について③ 1代雑種稲種子(FI種のこと)(異なる品種を交配した1代雑種の稲種子)の暫定審査基準等について ④ 主要農作物種子に係る指定種苗制度の運用について これらの運用規定をすべて廃止するという内容です。種子法の廃止により危ぶまれる食の安全保障を補完するための対応が全く検討されていない中で、2018年4月の廃止に先だって運用を廃止してしまうという乱暴なやり方です。
また、種子法廃止の理由や経緯がとても不透明なものでした。2015年「総合的なTPP関連政策大綱」では種子や種子法についての言及はありませんでした。昨年10月の内閣府規制改革推進会議「農業ワーキンググループ」と「ローカルアベノミクスの深化」会合の合同会合で初めて種子法の廃止が登場し、2016年11月に決定した「農業競争力強化プログラム」にそのまま引き継がれ、それに従って実施されるものですが、種子法の議論はほとんどありませんでした。
なぜきわめて重要なこの法律を廃止するのか、その理由として農水省の説明では
「多様なニーズに対応するため、民間ノウハウも活用して品種開発を強力に進める必要があるが、都道府県と民間企業の競争条件は対等になっておらず、公益機関の開発品種が大宗をしめている、今後は民間企業との連携により種子を開発・供給することが必要」だとし、民間企業の開発した品種の普及を促進することが目的とされています。しかし都道府県の農業試験場などでの品種改良、品種開発、奨励品種の指定についてはそもそも種子法の規定ではありません。地域の農業振興のために、気候や風土にあった品種の改良にとりくみ、地域にあう品種を奨励しているものであって、民間企業を排除する規定はありません。たまたま民間企業の開発品種が採用されなかったにすぎず、実際に民間企業開発品種は複数あります。普及品種のうち12%、44品種がすでに民間企業により開発されているのです。たとえ民間参入が必要だとしても、法の廃止の理由には足りません。こうした不明確な理由による種子法の廃止によって公的な供給体制で保障されてきたものが失われ、生産者が安心して種子を使う仕組みが失われてしまいます。
種子法が廃止されることで最も懸念されることは主に次の3点です。
1つ目は種子の価格の高騰です。これまで公的支援があったため、コシヒカリなどの優良品種は1キロ当たり500円程度と安価に購入することができました。もし、すべての種子が民間の手でなされるなら優良品種の種もみを4倍~8倍の価格で販売しなければならなくなると予想されています。すでに、民間で販売されている三井化学の「みつひかり」や日本モンサントの「とねのめぐみ」など、公共品種の4倍~7倍の価格で販売されています。また、民間の品種はF1種であるために、種を自家採取することはできず毎年種もみを購入しなければならなくなるうえ、民間会社との直接契約によって肥料や農薬などの購入が義務づけられるなど、農家へ大きな影響をもらしていまします。
2つめの問題は、品種の多様性が失われるということです。
これまで、米だけでも300品種、その地域にあった多様な品種を提供してきました。地域独自の種子が供給されてきたのは種子法によって各自治体に奨励品種の種子供給を義務づけてきたからです。地域にあった多様な品種が混在していれば、環境の変化や病害などあったときにも一定の収穫を得ることができるとして、品種の多様性を意識されてきました。
しかし、種子法廃止と同時に制定された農業競争力強化支援法8条3項では銘柄を集約して大手企業のために数種に絞られることになります。普及する種が限られた企業の限られた品種になってしまうということは、気候変動等による影響やリスクが大きく、食料自給に関わる問題です。
また同じく農業競争力強化支援法の8条4項では、これまで日本が蓄積してきたコメなどの原種、原原種、優良品種の知見をすべて民間企業に提供することになっています。
住友化学や三井化学など、日本の民間企業の背後にあるモンサントやデュポンパイオニアなどの世界の大手種子産業らが日本の貴重な種子から応用特許を申請し、日本の農家は特許料を支払わなければならなくなります。
3つ目の大きな問題は食の安全です。日本でもすでに住友化学がモンサントと共同開発して遺伝子組み換え品種を70種開発されています。現在茨城県の隔離圃場で栽培されています。農業食品産業技術総合研究機構・農研でも国の予算が投じられ遺伝子組み換えのコメの種子を試験栽培しています。
いずれ遺伝子組み換えのコメも出荷できる準備は整っているのです。世界の大手企業が開発を進める遺遺伝子組み換え作物は、特定農薬に耐久性をもち、種子と農薬をセットで販売する手法をとっています。
今、世界の種子市場はモンサント、デュポンパイオニア、などたった4社で世界の種子の78%のシェアを握っており、そのほとんどは遺伝子組み換え作物です。そしてとうとう日本が守ってきた主要農作物までも巨大多国籍企業の種子ビジネスにのみこまれようとしています。
これは、瑞穂の国、日本がこれまで共有財産として長年守ってきた種子の安定供給を脅かす大変大きな問題であり、食料問題です。代々受けついできた主食の種を守ることは自分たちの食べる食べ物を守ることであり、国を守ること、命を守ることではないでしょうか。
以上の理由から、政府に対し日本の主要農作物の種子を公共の財産として保全するための新たな法整備とそれに基づく積極的な施策を求めるため本意見書を提案します。議員各位のご賛同賜りますようお願い申し上げ、提案説明といたします。