高尾の自然科学博物館を考える

高尾山のオオムラサキ(昨年7月)
高尾山のオオムラサキ(昨年7月)
新宿からわずか50分。ケーブルカーを使えばすぐにミシュラン三ツ星の自然を堪能することができます。高尾山は都心から最も近い、東京のオアシス。八王子はそんな素晴らしい宝を持っています。

−高尾山口駅を出てケーブルカー駅に進んでいくと、左手に「自然科学博物館」と書いてある。山の情報があるかもしれないので先にちょっと立ち寄ってみよう。−
こんな風に気がるに立ち寄れる山の玄関口に整備されようとしているのが「高尾の里 自然科学博物館」です。
先日、この「高尾の自然科学博物館を考える会」の方にお話しを聞いてきました。
かれこれ6年以上前、東京都高尾自然科学博物館が閉鎖され、新しい博物館を整備する計画が八王子市によって進められてきました。しかし、市が出した計画案は、作り物のブナの木をメインシンボルに、そのブナ(ニセモノ)を眺めて回るという構造。
観光課が中心となって進められた博物館は、見た目はカッコイイかもしれませんが、本来の目的である・知る・学ぶ・体験する・研究する・集う 等の機能が決して十分とはいえないものでした。そしてこの問題を指摘した考える会の方たちが代替え案を作り、市に提出しています。

高尾山には年間約260万人登山客が来ます。その数は世界一と言われるほど。家族でハイキングに行ったり、同僚とビアガーデンに行ったり、初詣に行ったり、都内に住む人なら誰しも登ったことがあるという山。小学校の遠足などで初めて知る自然の山だったりします。八王子の観光を潤わせてくれる格好の場所でもあるし、高尾山周辺の商店も山のおかげで商売繁盛。温泉を掘ればもっとお金を落としてくれるかもしれない、駐車場を作ったり、道路を拡げればもっともっと人が集まって経済が潤うかもしれない。と多くの人が考えるでしょう。
けれど、観光で経済が潤えばそれでいいのでしょうか?
これだけ多くの人が集まる山だからこそ、高尾山を通して日本の自然や世界の自然について考え、今危機にさらされている動植物の生態、私たちの便利な生活と引き換えに失ってきた自然のことを人々に広めることが大切です。
高尾山を通して本当に人々に伝えていかなければならないことは何なのかを考えることこそ、高尾山を誇る八王子の役目ではないでしょうか。